平成25年度10月特別セミナー(H25.10.4)

「失敗から学ぶ」
(沖縄市産業交流センター)
講師:福田 隆氏(市川市)・岡部 成行氏((株)ピーエス三菱)・新城 勇氏(金秀建設(株))・前田 憲一氏((一社)建設情報化協議会)

今回のセミナーは「失敗から学ぶ」と題して、現場建設技術者による経験発表でした。

福田講師2

最初の講師は市川市の福田隆さんでした。

Ⅰ.失敗のメカニズム
(1)日常生活における失敗:忘れ物、道を間違える、段差などでの躓き、運転ミスによる事故、酒を飲んでの失言について例を挙げて説明されました。

(2)建設工事における失敗:設計ミス、施工ミスによる事故、品質不良、労働災害などについて、先生ご自身の体験を通して説明されました。

(3)失敗の定義:自分が思った通りうまくいかなかったこと。動作の失敗だけでなく、判断ミスも失敗。本人は、うまくいったと思っても他人からは失敗だったという評価も失敗。ヒューマンエラーなどについて失敗の定義として説明されました。

(4)ヒューマンエラーの分類:①認知・確認のミス、②判断・記憶のミス、③操作・動作のミス。
1)入力エラー(認知・確認のミス):見間違い、聞き違い
2)媒介エラー(判断・記憶のミス):①先入観・思い込み、②作業手順が複雑、③複雑な作業を同時に行う、④プロセスが間隔と違う、⑤配置や表示の方法がわかりにくい
3)出力のエラー(操作・動作のミス):①技能・技術力が未熟、②集中力の低下、③身体機能の低下・体力不足、④多忙・身体疲労、⑤精神的な動揺

上記について、先生の体験などを交えながら分かりやすく説明されました。

Ⅱ.設計・施工の失敗から学ぶ
これは、先生がゼネコンに勤められていた頃に体験したことを中心に紹介された失敗事例です。

1.支圧壁部分の掘削において、ボイリングが発生
発生状況⇒原因⇒対策の流れで説明され、ここで失敗からの学びとして次のことを述べられました。
土留壁の設計計算を行うときは、本体工事の掘削深さだけでなく、仮設や附帯工における掘削深さを考慮する。
今後、土留工を施工する現場を担当される場合は、上記のことに気を付けながら仕事を進めていただきたいものだと思いました。

2.地下水位の変動で、鋼矢板の強度及び根入れ深さが不足
発生状況⇒原因⇒対策と述べられ、失敗からの学びをまとめられています。
設計書のチェックや施工計画を行う時は、地下水位が季節によって変動することに考慮することが重要とのことでした。

3.掘削内の水で構造物が浮き上がる
発生状況⇒原因⇒対策
失敗から学ぶ:海や河川に近接する工事では、気象による地下水位の上昇、降雨による増水等を考慮して浮力の検討を行うことが重要とのことでした。

4.到達直前で推進器が停止
発生状況⇒原因⇒対策
失敗から学ぶ:現地踏査においては、地形、地表面の地質、植生状況、土地の利用状況などから、設計図書に表されていない土質・地層を推定することが重要とのことでした。

5.設計・施工において失敗しないための配慮事項
上記の4つの事例から、失敗しないための配慮事項を挙げて説明されました。
(1)掘削深さの確認、(2)地下水位の確認、(3)土質・地層の確認について詳しい説明がありました。

251004会場

Ⅲ.事故・労働災害から学ぶ
1.可搬式グラインダーの砥石が割れて顔にあたり死亡
発生状況⇒原因⇒対策
失敗から学ぶ:定められたことを守らないと、災害が発生する。

2.鋼矢板の錆びで車の塗装を損傷
発生状況⇒原因⇒対策
失敗から学ぶ:錆び、土砂あるいは粉じん等が飛散する恐れがある場合は、事前に除去する。

3.ショベルローダーに激突され死亡(引用文書:厚生労働省・職場の安全サイト・災害事例 より)
発生状況⇒原因⇒対策
失敗から学ぶ:重機との接触・激突を防止するため、重機の作業箇所と作業員通路を分離する。

4.撹拌羽に巻き込まれて腕を負傷
発生状況⇒原因⇒対策
失敗から学ぶ:正しい使い方をしないと、安全装置は役に立たない。

5.「鉄砲水」で危機一髪
発生状況⇒原因⇒対策
失敗から学ぶ:下水道や水路で作業を行う時は、上流地域の降雨によって、急激な増水があることに留意する。

6.既設下水道管再構築工事において、急激な増水により5名死亡
発生状況⇒原因⇒対策
失敗から学ぶ:現場特性の事前把握、工事等の中止基準・再開基準の設定、迅速に退避するための対応、日々の安全管理の徹底。

7.国分川分水路トンネル水没事故
事故の概要⇒発生状況⇒原因⇒対策
防止対策:異常天候時への処置、情報伝達手段、設計時の配慮。

8.事故・労働災害を防止するための安全対策
安全対策は、NHK(N:無くす、H:離す、K:工学的対策)だ!と言われました。
さらに、①法に定められたことを確実に実施、②安全対策は、NHK、③管理的対策、④個人用保護具の使用。

最後に、まとめとして
☆失敗は貴重な体験です。隠す必要はありません。
☆失敗を真摯に受け止め、対策を立てましょう。
☆失敗を忘れないように記録を残しましょう。
☆失敗とその対策を水平展開しよう。
☆失敗から学んだことを次の世代に伝えましょう。

現場で監督している皆さんには、非常に役立つお話だったように思います。今後の施工に役立てて頂きたいものです。

岡部講師

2番目の講師は、(株)ピーエス三菱の岡部成行さんでした。自己紹介の後、講義が始まりました。

1.ヒューマンエラーを防止するために
土木分野における災害の四つの状態として、不安全状態5.1%+不安全行動12.5%=86.7%となると言われました。
ヒューマンエラーとは、人間が自分の意志で行動するときにおこること。人間の特性だとのお話でした。
12の原因:①無知・未経験、②危険軽視・慣れ、③不注意、④連絡不足、⑤集団欠陥、⑥近道省略行動、⑦場面行動本能、⑧パニック、⑨錯覚、⑩中高年の機能低下、⑪疲労等、⑫単調作業による意識低下。

※ヒューマンエラーを防止するために
指差呼称を実施する。ヒヤリハット体験の報告・活用、リスクアセスメントを取り入れたKYK、最後にハインリッヒの法則について説明されました。

§1.コンクリート構造物の設計による不具合事例に関するアンケート結果と分析
不具合事例に関するアンケート結果と分析として、設計計算、図面と計算の2つに分けて、その不具合事例と参考資料を等を表により説明されました。

§2.不具合事例の紹介
①緊張ジャッキが鉄筋(スターラップ)と干渉する。対処方法として、干渉する鉄筋の加工形状を変更して対応。
②箱桁内に排水管を引き込む排水構造で、ウェブを通過する排水管とスターラップが干渉する。対処方法として、スターラップのピッチを調整、補強筋の配置。
③下床版軸方向鉄筋の径が下床版厚さの1/10~1/15以下になっておらず、構造細目を満足しない。対処方法として、上部構造のモデル化の変更、高強度鉄筋の使用。
④開口部(マンホール、排水管など)に対する補強鉄筋量が不足している。対処方法として、補強筋を切断鉄筋と同じ方向にも配筋する。
⑤隣接工区の施工状況に配慮していないため、緊張方向を変更する必要がある。対処方法として、片引きとして照査を行い、応力度超過等の設計上の問題がないか確認する。この変更で設計上の問題が生じた場合、導入緊張力もしくは鋼材配置の変更等を行う。
⑥排水升と排水管が床版内に配置されているため、取り換えができない構造である。対処方法として、取り換えが可能となるように、床版外に継ぎ手部を設ける。

§3.失敗事例の工事概要
東風平高架橋の事例を紹介されました。
①突然のスコール
コンクリートの打設中に、スコールにあった。トラロープとブルーシートで降雨対策を行ったが、全体的にコンクリート表面が洗い出されてめくれてしまった。また、シートがめくれた箇所に雨水が当たり表面不良を起こした。
対策として、高圧洗浄機で洗浄し、研磨機で研磨してからオズモを散布して、プライマーを塗り仕上げを行った。
次の施工に対しての対策として、福員12m方向に屋根フレームを3m間隔で打設前に設置して屋根の準備をした。

②表面気泡の発生による表面不良
円筒型枠補強部の固定用ビスから空気が漏れたのではないかということで、固定用ビスのコ―キングを行い、次施工においては問題なく施工できた。
全体に言えるのは、失敗したことをきちんと隠さずに発注者に報告し、次の施工においてその反省をもとに改善したことが発注者の高評価を得た。

次に、他の現場にての事例として、失敗学のすすめ 畑村洋太郎著の表を基に、①事象、②経過、③原因、④対処、⑤総括、⑥知識化という形でまとめると失敗事例も次の工事にや水平展開に有効になる。ということを説明されました。
台風により現場事務所及び宿舎の倒壊、コンクリート打設中における生コン工場プラント設備故障によるコンクリート品質不良。を上記表に当てはめて作成した事例を紹介されました。

新城講師

3番目の講師は、金秀建設(株)の新城勇さんでした。

1.私の取り組み
目標、動機、目的などを紹介して頂きました。
本題に入る前に、東日本大震災について建設技術者である新城さんの立場から話をされました。確かに消防・自衛隊は活躍したが、実際に震災現場に行くために、がれきをのけて道をつけた建設会社が評価されず、相変わらず談合を楯に批判の的になっていることを嘆いていました。

建設業の評価が相変わらず低いのは、見せ方が下手だということだと思うことを言われました。
昔は経験と勘と度胸が現場代理人に求められ、書類なども創意工夫を持って臨むと叱られ、横並びがベストだと言われた。しかし今は、総合評価落札方式となり、顧客のために工夫し考えることが必要だとのお話でした。

○見せる工夫について
新城さんが経験した港川現場の事例を紹介されました。現場近隣の道路が倒木によってふさがれた際に対応したこと。
工事に対する反対運動に対する地道な対応、廃棄物処理の際に見つかった不発弾対策、工事の品質管理として工事の初めから完成書類のファイルを揃え、どこに片付ければよいか見えるようにしたとのことでした。

又、CCPM工程表を活用し工程の見えるようにし、毎週進捗の変化が発注者に分かるようになったり、ワンデーレスポンスがスムーズに行うことができたことや、廃品を使ったイメージアップについて、どう見せるかを紹介して頂きました。
住民問題で大変だった現場を、自治会の活動に参加していたお陰で信頼を得ることができたと言われました。これが、優良工事表彰につながったと思われます。

2.失敗事例
○場所打ち杭の鉄筋籠の共上がり
共上がりとは、コンクリート打設中に何らかの原因で、鉄筋籠が引き抜くケーシングチューブと一緒に共に上がっていく現象。
共上がりの原因と対策については施工計画書に記述しておいたのだが、今回の失敗にはあまり役に立たなかったように思うと言われました。
原因は、フープ筋の内側に曲げたフックがトレミー管に引っかかって共上がりをしてしまったことや、整理整頓が不十分だったこと、人員が不足していたことだったそうです。

対策としては、端部に鉄板を貼り付けて施工したり、整理整頓と作業員数を増やしたこと。
学んだこととしては:人員体制を整えることや、資材の選択、工事保険に入ることなどを紹介して頂きました。

前田講師7

最後の講師は、(一社)建設情報化協議会の前田憲一さんでした。まず、前田さんの経歴を、写真や図を交えた略年表で説明されました。
技術者には多くの失敗が必要であるということで、「失敗は成功のもと」「失敗は成功の母」「失敗は成功の一部である」と言われました。

その後、前田さんが現場監督をしていた時代の失敗経験事例を説明されました。
その中で、特に海外でケーソンを設置した時に、規格値をわずかに外れた際に施工をやり直した時のことを詳しく説明されました。
失敗を重ねてきた結果が、成功につながるのだから水平展開して、共有していくことが必要だとのお話でした。
又、JCMに失敗事例を投稿すると、3ユニット得ることができることを紹介されました。

次に、沖縄総合事務局開発建設部がまとめた事例をダウンロードして、紹介されました。
先輩などから失敗したことを聞いて覚えておくと、ある時同じような状況に置かれた時、その事例をふと思い出し失敗を免れたということが、これまで何度かあった。ということは、前田さんが言われる失敗事例の水平展開は、とても重要なことだと感じました。

失敗のPDCAや失敗の階層性などについても説明されました。
失敗防止のポイント:①業務全体の把握、②疑似体験(訓練失敗)についてや、失敗学についての説明があり、ヒューマンエラーについては、事例を挙げて解説して頂きました。

今回の4名の講師のお話は身近に感じる内容も多く、受講者にとっては非常に有意義なセミナーであったと思います。

平成25年度10月定例セミナー(H25.10.19)

「自然災害などに対する備えとして地域BCPやBCMを考える」&「アセットマネジメントの重要性」
(沖縄県総合福祉センター:那覇市)
講師:牛島 栄氏(東京電機大学客員教授)

牛島講師4

今回のセミナーは午前・午後共に東京電機大学客員教授の牛島栄先生に講師をお願いしました。
午前の部は、「自然災害などに対する備えとして地域BCPやBCMを考える」と題した講演でした。

始めに、牛島先生の自己紹介があり、素晴らしい経歴を知ることが出来ました。昨年度までコンクリート標準示方書の作成に携わったり、又コンクリート技士試験の問題作成なども実施していたとのことで、今日はかなり勉強になるお話が聞けそうに感じました。

現在の建設業界の状況として、 「アベノミクスや国土強靭化計画で、工事量が増えている。単純に考えれば仕事が増えてよいのだが、実際に仕事をしてくれる技能工が高齢化していることや、仕事量が減った頃に辞めてしまった人がいることから、技能工の絶対数が足りない。これは、現場監督をする人たちについても同じことが言える。
今、経済波及効果のみで一気に仕事を増やしても、将来的な展望に立って考えると、若い技術者の仕事がなくなる。継続的な建設部門の発展を考える必要がある。」
と言われました。

1.事業継続計画(BCP)とは
東日本大震災(平成23年3月11日発生)において、中小企業の多くが貴重な人材を失ったり設備を失ったことで、廃業に追い込まれました。又、被災の影響が少なかった企業においても、復旧が遅れ自社の製品・サービスが供給できず、その結果顧客が離れて事業を縮小し、従業員を解雇しなければならないケースも見受けられました。

このように緊急事態はいつ発生するかわかりません。BCPとは、こうした緊急事態への備えのことをいいます。
ただし、突発的な緊急事態がBCPの想定どおりに発生するはずもありません。又、BCPを策定していても、普段行っていないことを緊急時に行うことは、実際には難しいものです。緊急事態において的確な決断を下すためには、あらかじめ対処の方策について検討を重ね、日頃から継続的に訓練しておくことが必要なのです。

災害後の事業継続の重要項目として、①指揮命令系統の明確化、②重要拠点の機能確保、③情報発信、情報共有、④情報システムのバックアップ、⑤製品・サービスの供給について、詳しく説明されました。

2.BCPの普及状況
金融・証券・生保、社会インフラ、製造、物流・卸・商社、スーパー、コンビニ、店舗等、ホテル・娯楽施設等の策定動向を説明されました。特に、我々の関心は社会インフラですが、これについては、①災害復旧、インフラサービス継続対策、自組織の活動の継続などについて解説して頂きました。

3.BCPと他のリスク対応との関係
従来の防災計画とBCPの比較として、通常我々が考えているような対策、たとえば被災地への支援計画などについては、それに加え公的機関も甚大な影響を受けることや、優先的に実施する業務などを付け加えて説明されました。

地域防災計画とBCPということで、行政の施設・設備や職員も甚大な被害を受けることが想定されていないことから、自らの被害を想定して、計画通り活動ができるかをリソース確保の可否等から、検証する必要があることを強調されました。
この時、参加者多数の携帯電話が鳴り出しました。マナーモードにしていても鳴っていたのですが、内容は那覇市から防災訓練のアナウンスでした。
まるで今日のBCPの話にマッチしたようなアナウンスで、タイムリーな出来事でした。

4.BCPの普及策
内閣府、中小企業庁、経済産業省などの政府機関のガイドラインを紹介されました。
他にも、官庁営繕部、地方自治体、NPOなどについても紹介して頂きました。

5.新型インフルエンザとBCP
地震・風水害と新型インフルエンザの被害の比較ということで、比較表に基づいて解説されました。長期間にわたるのは新型インフルエンザで、こちらの方がかえって大変だということを説明されました。
又、「事業継続計画の意義と経済効果」という本についても紹介して頂きました。

251019会場

午後の部は、同じく牛島先生による「アセットマネジメントの重要性」と題した講演でした。

笹子トンネルの天井板崩落事故を受けて、なぜ打音検査をしたのに事故が起きるのかについてお話をされました。そこで、打音検査の検査員を養成することや、検査水準を上げるというようなことが決まったことを紹介して頂きました。

1.公共インフラを取り巻く社会環境を知ろう
社会資本のストック額は700兆円、今後30~40年かけて大更新時代に突入していくと言われています。
インフラクライシスとは、「公共インフラの維持管理水準の低下が進めば、人命や生活水準の低下といった直接的な被害だけでなく、経済活動の低下や被害の復旧における膨大な財政負担などといった間接的なものまで、公共インフラは危機を迎える。」ことで、身近な事例を挙げて説明して頂きました。

2.維持管理の現状を最近の話題から紹介する
維持管理がなぜ重要なのかということを、沖縄の橋梁を事例に説明されました。
アセットマネジメント導入の基本フローを紹介では、沖縄県の状況としてアセットマネジメントを導入していないことの指摘がありました。他の地方公共団体の多くは既に実施しているとのことで、検査徹底型、資産管理型、予防保全型について解説されました。
その後、イギリスで1985年、ベルギーで1992年、アメリカで2000年と2007年に落橋した様子を、ビデオや写真で紹介して頂きました。

3.国土交通省における道路橋の維持管理の現状と問題点
道路橋ストックの現状を紹介して頂き、今後どんどん老朽化が進行していくことを解説されました。又、いくつか日本の橋の老朽化の状態を紹介して頂きました。

4.道路橋の維持管理に対する問題認識
地方自治体の橋梁の管理状況の実態の紹介があり、調査はしているが、ほとんど補修されていないということを強調されていました。
又、見てもわからないいうことを、写真を紹介しながら説明して頂きました。現状では課題が満載のように感じます。

維持管理に関する対応については、法制化がこれまでされてなく、やっと国土強靭化で法制化されるようになったとのことです。
これからは、維持管理・補修・補強については、法制化によって予算化され、仕事量も増加していくことが予想されます。又、これを活用して利益に換えていくことが必要だとも言われました。

5.維持管理手法としてのアセットマネジメント
フロー経済⇒ストック経済 公的機関(構造物管理者)の対応についての転換についてお話されました。

6.維持管理マネジメントの体系化
今までは、ソフトが欠落しハードに専念してきた傾向があり、造ることを重視してきた時代でしたが、今後はソフトに重きを置く時代だと言われました。
たとえば、橋を造るではなく、橋を渡って向こう岸に行くことが大切で、その大切なものがソフトだとのことでした。
そのソフトに着目しているのがアセットマネジメントであり、今後益々重要視されることと思います。

7.NPM(ニューパブリックマネジメント)
国交省においては、NPMとは「民間の経営手法を公的部門に応用した公的部門の新たなマネジメント手法で、①定量的な目標の設定と成果主義に基づく経営、②競争原理の導入による効率化、③顧客主義、④現場主義」と書かれています。
予算を一定にして、生み出す価値を最大にする。価値を一定にして、予算を最小化する。ということを事例を挙げてわかりやすく説明されました。

8.アセットマネジメントの現状と課題
公共施設の具体的な現状と課題として、建築、道路・橋梁施設、港湾施設、ごみ処理施設などを事例に、現状と課題について解説されました。

9.アセットマネジメントの具体的手法
アセットマネジメントフローを紹介され、維持管理方針について簡略的に説明して頂きました。
そのあと、劣化予測とライフサイクルコスト(LCC)についての説明があり、アセットマネジメントのガイドラインについては、①維持管理目標、②施設の状態の把握と評価、③経済性評価、④中期管理計画の実施、⑤維持管理の実施、⑥維持管理の事後評価とモニタリングについて解説して頂きました。
次に、アセットマネジメントのPDCAについて説明がありました。

10.補修工事におけるお金の問題点
①予算金額と入札金額に大きな差がある
②設計変更をしない。
③想定外の補修工事で大赤字
④設計条件が考慮されない発注
この時に、とにかくお金の話は後にしても、指示書はもらっておくことが重要であると強く言われました。

本日のセミナーは非常に内容が濃く、参加者からのアンケート結果でも高い評価を頂きました。
今回の牛島先生の講義内容は、来年1月開催予定の石垣・宮古セミナーでも同様にお願いしました。
こちらでも多くの受講者の参加をお待ちしております。

平成25年度10月石垣・宮古セミナー(H25.10.22-10.23)

「コンクリート技術の現状」
(建設業協会八重山支部:石垣市、建設業協会宮古支部:宮古島市)
講師:篠田 佳男氏(日本コンクリート技術(株))

今回の石垣・宮古セミナーは、日本コンクリート技術(株)の篠田佳男先生による、「コンクリート技術の現状」と題した講演でした。

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講義内容は、本年5月に開催されました「5月特別セミナー」と同様ですので、そちらをご参照下さい。

平成25年度11月定例セミナー(H25.11.9)

「地盤改良技術の最近の動向」&「復興に向けた3.11震災からの教訓と技術者倫理」
(浦添市社会福祉センター:浦添市)
講師:熊谷 浩二氏(八戸工業大学教授)

熊谷講師2

11月定例セミナーは八戸工業大学の熊谷教授をお招きしての講演でした。はじめに教授の自己紹介があり、続いて午前の部の「地盤改良技術の最近の動向」と題した講義が始まりました。

地盤改良技術は「地盤の条件を目的に合わせる」ことが大切とのお話があり、構造物の形式変更(押え盛土工法等)、置換工法、圧密・排水工法、締固め工法、化学的安定処理、地盤注入、熱的・補強土工法等の紹介がありました。

次にジオセル補強地盤についての解説があり、セル内に充填材を充填することで強度を発揮するジオセル構造体の実験結果や、支持力試験概要等の詳しい説明をして頂きました。

又、優れた浸透性・長期耐久性を有するグランドエースや、廃棄物の処分場等で有効に活用出来る動圧密工法、セメント系固化材の適用方法、HGS短繊維混合補強土工法等の紹介がり、地盤改良技術の最近の動向を知る上で非常に勉強になった講演でした。

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午後からは「復興に向けた3.11震災からの教訓と技術者倫理」と題して、建設技術者として東日本大震災から学ぶべき貴重なお話をして頂きました。

まず「くしの歯」作戦と言われる三陸沿岸地区の道路復旧の実例を紹介して頂き、いまだに継続中である放射性廃棄物や災害廃棄物全体の課題、BCP(事業継続計画)やDCP(地域継続計画)の概要についての解説がありました。

又、北東北地域での被害概要として、建物被害や土木関連施設の被害状況を多くの写真と共に紹介して頂き、改めて災害への備えの重要性を考えさせられました。

研究分野への教訓としては、技術者の積極的な技術提案や安全・安心な施設建設&モニタリング技術の信頼性向上、住民のニーズを把握できる能力・体制の充実・強化、リスクコミュニケーション等を挙げられました。

さらに田老地区や釜石地区での経験をもとに防災教育の重要性を強調され、南海トラフによる巨大地震に備えた対策の強化についても詳しい説明がありました。

地震災害が少ないと言われる沖縄においても、災害に対する防災体制の重要性を深く考えさせられた講演であったと思います。

平成25年度12月定例セミナー(H25.12.14)

「建設現場における地球温暖化対策」&「塩害に伴う床版取替え等について」
(北部生涯学習推進センター:名護市)
講師:古家 克彦氏((一財)沖縄県環境科学センター)&山戸 隆秀氏(西日本高速道路(株))

古家講師3

午前の部は(一財)沖縄県環境科学センターの古家環境科学部長による「建設現場における地球温暖化対策(J-クレジット制度とカーボンオフセット)」と題した講演でした。

まず新しく制定されたJ-クレジット制度についての説明があり、我が国の温室効果ガス排出量の現状や排出削減方策、旧国内クレジット制度及びJ-VER制度の概要等の解説をして頂きました。
J-クレジット制度は2013年以降も国内における排出削減対策・吸収源対策を引き続き積極的に推進していくよう、旧制度を一本化して利便性を向上させたもので、産業界の取組みやカーボンオフセットの取組みを更に拡大していく狙いがあるとのことでした。

J-クレジット制度参加者のメリットとして、プロジェクト実施者は、①温室効果ガスの排出削減・省エネルギー対策の実施、②ランニングコストの低減効果+クレジット売却益、③森林吸収対策やCO2以外の温室効果ガスの取組み可能、④PR効果等があり、プロジェクト活用者には、①低炭素社会実行計画の目標達成、②カーボンオフセット、CSR活動、③温対法の調整後温室効果ガス排出量の報告、④省エネ法の共同省エネルギー事業の報告等を挙げられました。

過去の事例紹介(旧制度)では、Jリーグ・セレッソ大阪によるホームゲーム全試合をカーボンオフセットの事例や、レンタカー事業における電気自動車の新規導入事例、木質バイオマスを利用したCO2排出抑制をしている南アルプス市の事例等の紹介がありました。

後半のカーボンオフセットについての説明では、CO2を出してしまう活動に対し「他の場所で実現したCO2削減・吸収量の取組」に資金提供等をすることにより埋め合わせを行う仕組みの概要解説があり、事例として各種イベントでのカーボンオフセットの紹介をして頂きました。

地球温暖化による異常気象が続く中、沖縄においてもJ-クレジット制度やカーボンオフセットに対して、積極的に取り組んで行かなければならないと強く感じた講演でした。

山戸講師

午後の部は、西日本高速道路(株)関西支社福崎高速道路事務所の山戸保全課長による「塩害に伴う床版取替え等について」と題した講演でした。

まず自己紹介からスタートされ、加えて経験されてきた現場の話を混ぜ合わせた話をして頂きました。
1.道路資源の戦略的利用活用in京都
京都縦貫道(国道478号)で、植栽時課長として体験されたことをまとめられたものでした。
京都亀岡市は明智光秀に縁がある場所で、角倉了以は、安土・桃山、江戸時代初期に活躍された豪商で、その一族が400年掛けて掘った「菖蒲谷隧道」の紹介がありました。トンネル工事をこれまで数こなしてきた山戸さんとしては、とても興味のあることだったとのことです。

維持管理は元々、地元の苦情係的な立場でしかなかったため、予算削減・少人数化が図られたことから地元の力を借りざるを得ず、NPO・産官学の連携で実施することを試みたとのことでした。
その際に実施した竹繊維マットと松葉菊や竹林マットを利用した法面工についての紹介がありました。

又京都市・亀岡市のNPOや産官学連携の取り組み紹介があり、亀岡市では竹炭の埋設農法について取り組んでいたが、3年目に転勤となって残念だったことを語られました。
更に竹の循環型社会構築について、山戸さんが取り組まれたことをフロー図を用いて解説して頂きました。

2.塩害に伴う橋梁床版の架け替え(内在塩分と凍結防止剤の散布)
沖縄自動車道と中国自動車道の比較表を出して、内在塩分と凍結防止剤による外来塩分の特徴を説明されました。

(1)伊芸橋(鋼橋)の床版架け替え
沖縄自動車道の伊芸橋の事例紹介・内在塩分(1.4㎏/㎥)をして頂きました。全面的に塩害を受けていたため床版をかけ替えることになり、プレキャストPC版で打ち換えることになったことについて説明されました。
次に、施工順序などの施工方法についての紹介があり、プレキャストPC床版を選定した理由を、現場打ちPC床版、底鋼板構造型プレキャスト合成床版と比較して説明されました。

(2)西下野高架橋の床版架け替え
西下野高架橋の紹介では、ポットホールが多発し床版まで凍結防止剤が回って床版が劣化したとのお話でした。
施工時期については、交通量の多い時期や雪が降る時期を外すと9月から11月の間しか施工期間が取れなかったとのことでした。
沖縄では考えにくい雪で施工ができない期間があるとの興味深い紹介でした。
次に同橋の補修履歴を紹介して頂き、床版増し厚、床版防水等いろいろな手を尽くして手当してきたことが伺える内容でした。

続いて床版の損傷図と劣化状況の写真の紹介があり、山戸さんは沖縄で一番悪い状態を見ていたが、それでも驚くほど床版の損傷が激しかったとのことでした。
日常の点検においては、毎月点検に行くたび検査路にかぶりコンクリートが落下している状態だったことをお話されました。
凍結防止剤による塩害は、飛来塩分による塩害より厳しいことが伺い知ることができました(年間1522tで、10.6㎏/㎥(1年間))。
その後、道路使用許可を取るために警察説明用に作成した塩害が招く橋への影響を分かりやすく説明されました。又山戸さんが考案された床版上下面の総合評価判定(案)についての紹介もありました。

次に交通規制について警察やNEXCOの内部調整に苦労されたお話があり、スピードを出して走る車に対する安全対策は、いろいろなところに配慮して実施していかなければならないことをリアルに感じ取ることができました。
又PC版とPC版のつなぎ目については、沖縄の伊芸橋で段差が出てしまったことを反省し、そのつなぎ目の工法として開発したSLJスラブ工法について説明して頂きました。

(3) アルカリシリカ(ASR)反応について
沖縄ASR委員会で作成した評価フローを紹介して頂き、偏光顕微鏡の写真を用いてASRの状態を説明されました。

(4) LCCの最小化、高品質かつ高耐久性の実現
伸縮装置の腐食を防ぐための金属溶射の採用について、沖縄での事例を紹介されました。

251214会場

3.床版の補修について
(1) NEXCOで取り組んでいる床版の寿命化計画
①伸縮装置の小遊間止水工
②ダブル止水工
③埋設ジョイント(遊間が75㎜以下)
④フィンガージョイントの止水工法
⑤マクロセル腐食対策(亜硝酸リチウム、シラン系) 屋嘉第二高架橋で使用
⑥延長床版
⑦断面修復材(タフスラブ・ラピッド工法他)
⑧ウォータジェット工法とブレーカーによるはつり後の断面修復
⑨高性能防水工(橋面防水)
⑩端部防水層、砕石マスチック(SMA)(縁石を撤去して防水シートを立ち上げる)
上記について、図や写真により詳しく説明されました。

(2) 変状部
① 調査方法
ドリル法による塩化物イオン浸透深さについて鉄筋の裏側まで調べる必要があることを説明されました。
② ひび割れ補修方法
0.2㎜未満、0.2~0.5㎜、0.5㎜以上で、ひび割れ塗布、ひび割れ注入工法、ひび割れ充填工法に分けて施工することを解説して頂きました。
③ 断面修復工法
左官工、吹付工、注入工について留意点を指摘しながら説明されました。
④ 表面含浸材
シラン系、ケイ酸塩系等について、3年ほど暴露試験をしていたことのエピソード難度を加えて解説して頂きました。

(3) 新名神高速道路
非鉄製橋梁の共同開発については、腐食しない新材料を開発しているとのことでした。
高強度繊維補強コンクリートとあら美度FRPロッドによるプレストレスの組み合わせで設計して取り入れているとのことでした。

塩害の影響が多い沖縄の建設技術者にとって、非常に有意義な講演であったと思います。

平成25年度1月定例(新春特別)セミナー(H26.1.18)

「沖縄における建設技術者のこれから」&「沖縄県の水事情」
(沖縄県総合福祉センター:那覇市)
講師:矢吹 哲哉氏(琉球大学名誉教授)&飯島 芳典氏((株)ニュージェック)

矢吹講師2

今回は新春特別セミナーとして、午前中は琉球大学名誉教授である矢吹哲哉先生による「沖縄における建設技術者のこれから」と題した講演でした。

Ⅰ.沖縄における建設系技術者のこれまで
戦後70年間の地方事業補助・助成制度の中で、特に沖縄における沖縄復帰特別措置や沖縄振興特別措置のお話から始まりました。
又、建設分野の経済活動や建設分野の給与総額にについて、グラフ等を用いて分かりやすい解説をして頂きました。

沖縄の技術者にとっては、本土ゼネコンとのJVや下請けを行うことにより、オールジャパンの技術を習得する機会を得てきたが、独自技術の開発が遅れていたとの指摘があり、必要性や認識の欠如があることについてもお話されました。

Ⅱ.沖縄における建設分野の課題
①持続的発展の可能性
従来型(地元優遇型)の持続の可能性は減少し、一般競争下で如何に持続的発展に導くかが課題となっているとのことでした。

②ゆるぎない社会基盤を支える施設の性能精査
ゆるぎない社会基盤の構築、施設性能の仕分け精度、老朽化の仕分け精度などから沖縄における知見が必要になってきており、これらは沖縄における技術者のこれからを支える基盤であるとお話されました。

Ⅲ.沖縄における建設系技術者のこれから
「鍵は、高度専門性に裏付けされた沖縄の知見にあり!」と言われました。
これからは、長期にわたり常時沖縄を観察・調査・熟考することが必要となり、それができるのは在沖縄技術者であり、その点に関してはかなり有利であることを事例等を交えながら説明されました。

又、事例を挙げて先生が研究されてきた「沖縄の腐食環境」についての紹介がりました。
沖縄の腐食環境においては促試験場が設けられる優位性があり、負極に関する知見の宝庫であり、腐食に関する高度専門性情勢の最適地であるとの説明があり、この環境下において沖縄の技術者に商機があるのではないかということを力説されました。

その後、飛来塩分の発生メカニズム、東アジア地域の気象、腐食環境と鋼腐食の相関関係に関する知見(飛来塩分量、温湿度、風向風速、腐食性状)腐食マップ、腐食速度の比較、腐食減耗量の比較、腐食速度と飛来塩分量の関係などを紹介し説明されました。
更に、各種のボルト類に関する暴露試験などの成果の紹介があり、腐食防食に関する知見として、辺野喜橋が供用から28年で実況暴露された耐候性鋼使用橋での世界初の事例において、これが腐食防食情報に関する宝の山となっていることをいくつか事例を挙げて説明されました。
例として、付着塩分量調査、桁腐食特性、風洞実験などの結果を踏まえた検証について詳しい説明がありました。

Ⅳ.まとめ
これまで、説明されたことのまとめを述べられたのち、沖縄県の技術者に勝機があることを語られました。

沖縄県では鋼材の腐食が必ず付いて回り、我々の造ってきた鉄筋コンクリート構造物や鋼構造物を蝕んでいることは、土木技術者であればよく知っていることです。
先生はその問題に対して、沖縄県の技術者がそれを克服する最も良い場にいることを説明され、これから立ち向かわなければならない塩害による老朽化に対してイニシャーチブをとれることを教えてくださいました。

お忙しい中、貴重な講演をして頂いた矢吹先生に敬意を表したいと思います。

飯島講師2

午後からの講義は(株)ニュージェックの飯島芳典さんによる「沖縄県の水事情」でした。

1.水道の基礎知識
1-1.水の流れ
水源施設⇒導水施設⇒浄水施設⇒送水施設⇒排水施設⇒給水装置⇒需要家 の流れを図を用いて丁寧に説明されました。
1-2.水源開発~需要家
水源の開発⇒浄水処理⇒給水装置⇒需要家を更に具体的に説明されました。
1-3.水道の用語
(1)水道の種類:水道事業、簡易水道事業、専用水道、簡易水道の用語
(2)水量の種類:1日平均給水量、1日最大給水量、時間最大給水量等の用語
を解説して頂きました。
1-4.水道用配管
用途による分類、継手による分類、鋳鉄管、について、基本的な部分に立ち返り説明されました。
1-5.水道の水質
水質を確認するために、①健康に関する項目(29項目)、②水道水の有すべき性状に関する項目(17項目)について、説明されました。

2.沖縄の水道
2-1.沖縄本島の水事情
沖縄本島の水源である北部の河川水、ダム水を県人口の8割が集中する中南部の消費地に送っているのが特徴であることを水源の内訳、各市町村への供給量などをグラフで説明されました。
更に、沖縄県の降雨事情を具体的に数値を用いて説明され、その中で全国平均の供給量に比べ57%に過ぎず、それも5,6月の梅雨、8,9月の台風に頼っている傾向にある厳しい水事情を述べられました。
2-2.水の流れ
沖縄本島の中北部の河川やダムから家庭まで届けられる様子を分かりやすい図を用いて説明されました。
2-3.水源開発
水事情が厳しいことを受けて、福地ダム、最近では大保ダム、億首ダムが建設され、水事情はかなり緩和されてきているとのことでした。
ただし、農業用水についてはまだ不足しているとのお話でした。
2-4.浄水場
久志浄水場など6施設について、所在地、施設能力、敷地面積、供用開始、主要水源、供給先などをまとめた表と写真で説明されました。
2-5.沖縄本島の管路
(1)導水管
導水管の布設は、琉球水道公社がS37~S45で68.8㎞、S50年から沖縄県企業局でh16までに200.2㎞布設され、総延長269.0㎞となっていることをグラフを用いて説明されました。
(2)送水管
米軍s29~s31で、3.7km、琉球水道公社 s40~s44で60.9㎞、s49~h14で278.2kmが敷設され、総延長339.1㎞になっているとのことでした。
2-6.離島の水事情
①採算性が悪く赤字、一般会計から繰り入れで経営している。②海水淡水化施設について維持管理費が高く、結果水道料金が高くなっている。沖縄本島より高い。③今後の簡易水道事業については、広域化計画の推進と合わせて、県営水道への移管の要望が強い。
との解説がありました。

260118会場

3.具体事例(北谷浄水場~宜野湾市)
3-1.水の流れ
北谷浄水場から宜野湾市への水の流れを図に具体的な数値いれたもので説明されました。
3-2.北谷浄水場
(1)高度浄水処理
比謝川、長田川、天願川の水質悪化で常に処理工程で対応が困難化しており、このため「生物処理」、「オゾン処理」、「粒状活性炭処理」の3つからなる高度浄水処理施設を導入し、より安全でおいしい水づくりに努めていることを説明されました。
(2)硬度低減化施設
石灰岩質の影響を受けて硬度が高くなっており、このため硬度平準化対策として、平成15年6月から硬度を低減した水を供給している。これを、施設の写真等を用いて説明されました。又、硬度低減化により生成したペレットは、程の舗装材として利用していることを紹介されました。
(3)海水淡水化施設
天候に左右されず、いつでも水を供給することができる海水淡水化施設の建設を進め、平成19年4月から日あたり4万㎥の水を生産することが可能となったことを、施設の写真や図を用いて説明されました。
3-3.宜野湾市
(1)水道事業の概要
認可地と現状、水源、浄水処理方法、浄水受水地点、配水池などの詳細を表や図を用いて説明されました。
(2)耐震化状況
図を用いて説明されましたが、まだまだ耐震化が進んでいないとのことでした。

非常にわかりやすく、まとめられた資料を用いた沖縄県の水道事情がかなり理解できた講演で、とても有意義なセミナーでした。

平成25年度1月石垣・宮古セミナー(H26.1.29-1.30)

「自然災害などに対する備えとして地域BCPやBCMを考える」&「アセットマネジメントの重要性」
(建設業協会八重山支部:石垣市、建設業協会宮古支部:宮古島市)
講師:牛島 栄氏(東京電機大学客員教授)

今回の石垣・宮古セミナーは、東京電機大学客員教授の牛島栄先生による、「自然災害などに対する備えとして地域BCPやBCMを考える」&「アセットマネジメントの重要性」と題した講演でした。

260129会場  260130会場

講義内容は、昨年10月に開催されました「10月定例セミナー」と同様ですので、そちらをご参照下さい。

平成25年度2月定例セミナー(H26.2.15)

「リスクアセスメント」
(沖縄市産業交流センター:沖縄市)
講師:堂下 等氏(堂下労働安全コンサルタント事務所)

堂下講師

今回は労働安全コンサルタントの堂下さんをお迎えし、「リスクアセスメント」と題した講義でした。
堂下さんはNTTを退職後、建設業や製造業・林業等における労働環境の安全コンサルタントとして幅広く活躍されています。

まずはじめに、労働災害の発生状況や安全に対する事業者の義務等の詳しい説明があり、災害発生時の企業責任についても解説がありました。
労働災害に関する裁判の判決例を示して頂き、改めて労働現場での安全確保の重要性を痛感する思いがしました。

次に具体的な安全対策として、安全朝礼や安全ミーティングでの心得、作業中の監督・指示の仕方等を具体例を挙げて解説して頂きました。
ここでは、理解しやすい言葉でのコミュニケーションの重要性を学ぶことが出来たと思います。

又、災害発生の要因やヒューマンエラーの防止対策等についても詳しい説明があり、思い込みや錯覚等に関する大切な情報を教えて頂きました。

260215会場

「リスクアセスメント」とは、起こるかもしれない危険:リスクを、それらが何処に何時潜んでいるかを洗い出し評価する:アセスメント、であり、導入の背景や効果等についても解説して頂きました。

更に、リスクアセスメントの手順や実施体制・具体的な手法等についても詳しく説明して頂き、受講者にとってはそれぞれの今後の現場作業においても、非常に役に立つ講演であったと思います。

平成25年度3月定例セミナー(H26.3.15)

「公共工事と環境対策」&「沖縄県の赤土流出防止対策の歴史と現況」
(名護市労働福祉センター:名護市)
講師:古川 由紀夫氏((株)イーエーシー)&原 久夫氏(琉球大学准教授)

古川由紀夫講師2

平成25年度の最後となるセミナーとなりました。午前の部は(株)イーエーシーの古川由紀夫さんに講師をお願いし、「公共工事と環境対策」と題した講演でした。

Ⅰ.環境問題について
環境問題の定義は、人類の活動に由来する周囲の環境の変化により発生した問題だと言われました。
そのあと、環境問題が起こる理由として、人類が環境に与える負荷が、自然の浄化能力を超えてしまっているからだとのお話がありました。我々の生活を豊かにするために発展してきた科学技術ですが、その負の側面として自然の治癒能力を超えることになってしまい、人間のあくなき欲望のために、自然がまいってしまっているということになります。

次に環境問題の種類を挙げられ、それに対する環境政策の歴史や環境関連法規(環境基本法等)をわかりやすく説明されました。
続いて、沖縄21世紀ビジョンとして、県民が望む将来像として、①沖縄らしい自然と歴史、伝統、文化を大切にする島、②心豊かで、安全・安心に暮らせる島、③希望と活力にあふれる豊かな島、④世界に開かれた交流と共生の島、⑤多様な能力を発揮し未来を拓く島という項目の紹介がありました。

又大気汚染については、中国が我が国に影響をもたらしている黄砂やPM2.5の正体や有害性などについて説明して頂きました。
以前読んだ本で、ドイツが環境問題に非常に敏感なのは、上流側にある環境技術の低い東欧諸国がドナウ川などの上流にあるため、垂れ流された汚染水の影響で被害を受けているということを思い出しました。
日本も偏西風が中国側から吹いてくる影響で大気汚染をもらってしまっています。

水質汚染については、沖縄の事例を挙げながら詳してわかりやすい説明をして頂き、更に土壌汚染については、土壌汚染対策法の目的などを中心に解説して頂きました。

Ⅱ.環境アセスメントの概要について
名護市は、辺野古移転問題による環境アセス問題があるため、参加者の皆さんが良く知っておられるというところから話が始まりました。
環境アセスメントの定義やその必然性を説明され、その歴史については訴訟大国アメリカで始まったことを紹介されながら、日本における歴史も説明されました。

環境評価の問題と限界、戦略的アセスメント(SEA)、環境影響評価法の対象事業、手続きの方法(スコーピング、スクリーニング)、環境影響評価の実施方法、事後調査等について、事例を挙げながら説明されました。
さらに沖縄県の歩みなどについて、先生が実際に体験された中から説明されました。

Ⅲ.事業の実施と環境配慮について
環境保全対策の考え方として、大気汚染、騒音、水の汚れ、水の濁りについて、まとめられた表を用いて説明されました。
赤土流出防止条例の内容のおさらいや工事中の具体的な対策事例として、①発生源対策、②濁水処理対策などについて、沖縄の事例を写真で紹介しながら詳しく説明されました。

保全対策の事例としては、陸域生物、海域生物について、表を基に説明され、さらに、外来種特に侵略的外来生物などの問題について具体的事例を挙げてお話しされました。
回避事例として、新石垣空港、漢那ダム、新多良間空港などの事例を写真を通して紹介して頂きました。

我々建設に係る技術者は、自然を壊する先駆者のように言われてきましたが、それを克服するためにも、工事に係る際は、率先してその対策を実施していかなければ、我々の子供や孫の世代に、マイナスとなる遺産を残すことになることを、改めて感じるセミナーであったと思います。

原講師3

午後の部は、琉球大学准教授の原久夫先生をお迎えし、「沖縄県の赤土流出防止対策の歴史と現況」と題した講演でした。

1.沖縄島の地質
沖縄県の地形と地質、南西諸島の位置、地形と地質などについての概要を説明されました。
又、国頭まあじの性質や沖縄島の地質図の説明された後に、採取方法として標準貫入試験などの留意点を説明して頂きました。

2.代表的な地盤
那覇市周辺の地質図や柱状図を用いて、島尻層群泥岩の上に沖積層として、軟弱地盤が載っていることを説明され、さらに名護市の柱状図として、名護断層を紹介して頂きました。

3.赤土等流出の歴史と現況
赤土流出による環境汚染問題として、①開発による土壌の浸食、流出が急増、②海域での自然環境の深刻な影響を説明され、沖縄島北部地域特に国頭まあじ、赤褐色の変成岩風化残石土について解説して頂きました。
赤土流出の歴史としては、第Ⅰ期を近代から復帰以前、第Ⅱ期を復帰~赤土流出防止条例制定まで、第Ⅲ期を赤土流出防止条例制定以降としてのお話がありました。
又、国頭まあじの採取位置と流出実験による流出量をジオグラフィックにて説明して頂き、明らかに読谷以北に発生していることが分かりました。

4.赤土等流出防止対策
沖縄県の赤土等流出防止条例が、1994年公布、1995年10月に施行されたことを示されました。もう少し早く条例が出来ていれば、降雨後に北部地域の海が赤くなり、なんだか泣いているように感じることもなかったのではと感じました。

具体的な赤土流出防止対策として、砂利敷設、転圧締固め、シート被覆、小堤、水路、畦畔などの写真を紹介しながら説明して頂き、更に発生源対策として、平面ではシート被覆、アスファルト乳剤吹付、転圧締固め。法面では植生工・緑化工、アスファルト乳剤吹付、転圧締固め、砂利敷設などの紹介があり、流出濁水対策として切り回し水路、水路、柵工、沈砂池(自然沈殿式)、濁水最終処理対策:処理プラントの計13対策の紹介がありました。

5.流出特性(赤土流出実験1)
先生が数多く行った実験の内、2例を挙げての説明がありました。まず一つ目の実験の目的として、赤土流出土量の地域差の把握で、沖縄島各地から採取土を集めて実験された事例があり、発明された実験器具の紹介と実験方法を解説して頂きました。又その実験の結果として、流出土量のヒストグラムを示されました。

6.流出特性(赤土流出実験2)
次の2つ目の実験の目的は、砂ろ過層のろ過効果を土壌ごとに調べることでした。資料として国頭まあじ、ジャーガル、島尻まあじを扱い、実験方法としては、定水位透水試験を行われたとのことでした。
ろ過型沈殿池の状況を写真で示され、そのメリットとして経済性と施工性に優れるが、デメリットして目詰まりが生じることを指摘されていました。

サンプルの採取位置を紹介があり、実験装置の図や写真を見せて頂きながら、実験方法についての説明がありました。
次に土壌によるろ過効果の違いを実験結果からグラフを用いて説明され、その結果、国頭まあじでは砂ろ過が有効であり、ジャーガルや島尻まあじでは砂ろ過が無効であったことが分かったとの解説がありました。
さらに、現行の設計法の問題点として、①半経験的、②放流量の設定、③ろ過層の目詰まりを無視の3点を挙げられ、先生が発案したろ過型沈砂池の設計事例の紹介がありました。

260315会場

7.地震と津波
沖縄にも大きな地震が来ることを、以前からこのセミナーで講師をしていただいた先生から伺ったことがあります。
インターネットやテレビで、3年経った3月11日に東日本大震災の様子を見ましたが、それが沖縄にも来るのかと思うと非常に心配になります。

先生のお話では、琉球弧、琉球海溝、フィリピン海プレートなどの3つが連動すると、マグニチュード9の大地震が起きる危険性があるとのことです。
又、地震被害の液状化マップ、津波の想定高さなどを紹介して頂きました。
本土の南海、東南海などの3つの地震についてテレビで見る機会がありましたが、それが沖縄にも来る可能性があるとなると、皆で対策を考えていく必要があると痛感しました。

赤土流出防止対策については、実際に実施している現場を何度も確認してきましたが、このような歴史があり、将来的にも対策が必要なことを知ることができ、自然と開発との調和の難しさを感じさせられた先生の講義であったと思います。